灯油とは?

基礎知識

灯油の原料となる原油の主な産地は中東や北米地域ですが、かつて日本国内にも油田が存在していました。古くは飛鳥時代、「天智天皇に越の国(現在の新潟県)から燃ゆる水を献上」という記録があります。江戸時代には灯火用や薬用として一部で使用され、明治時代には新潟県を中心とする日本海側で国産石油が盛んに採掘・販売されていました。

現在では、原油は輸入後に灯油として精製され、その過程で不純物の硫黄を徹底的に取り除くため透明度が高くなっています。硫黄は燃焼の際に硫黄酸化物を生成させるうえ、灯油タンクを劣化させる作用もあるからです。日常的に石油ストーブで使われている灯油は「白灯油」と呼ばれる精製度の高いもので、硫黄分は0.008%以下に抑えられています。 灯油の引火点は40度以上、沸点が170~250度で、常温であれば自然発火の可能性は低いといえます。

石油製品の輸送方法

環境面

灯油は化石燃料である原油からつくられているので、燃焼させることで温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を排出します。近年では、地球温暖化による気候変動を食い止めることが国際社会における喫緊の課題であり、長期的には持続可能な脱炭素社会へと舵を切ることが目標とされています。

エネルギー消費の構成比(2017年度)を見てみると、企業・事業所等が62.0%、運輸部門が23.2%、家庭部門が14.9%となっています。

CO2排出量(2019年度)で見ると、家庭では年間2.80トンを排出しています。その内訳を見ると、電気の使用による排出が67.1%、都市ガス14.3%、LPガス5.7%、灯油の使用による排出は12.9%となっています。

家庭で石油ストーブを保有する率が減少するのに伴って、灯油を消費する割合も減少傾向にあります。今後は家屋の暖房システムの進化などにより保温効果が進んで、灯油の需要は下降していくことが予測されます。

安全にお使いいただくために

灯油は暮らしのなかで身近なものですが、「危険物」です。取り扱いや保管方法を誤ると、火災や事故などを発生させるおそれがあります。

灯油の引火点は40℃で、液温がこれ以上になると可燃性蒸気が発生し、ガソリンとほぼ同様に危険性が高まります。

【引火点と発火点の違い】

引火点・・・
加熱することで一定の温度まで上がった可燃性物質が、火を近づけたときに燃焼が始まる最低温度。
灯油の引火点=40~60℃

発火点・・・
着火源がなくても、高温となった可燃性物質が燃える最低温度。一般的に、発火点は引火点より高い。
灯油の発火点=255℃

【使用上の注意】

使用する際に注意すべき点は、以下の4つです。

  1. 火気を近づけない。
  2. 直射日光を避け、高温にならず風通しのいい冷暗所に保管する。
  3. 必要以上に買いだめしない。
  4. 注入用ノズルなどは外し、容器を密栓する。

特に近年では夏の気温が40℃近くまで上昇する日が増えていますので2.の点には十分お気をつけください。

【灯油の使用期限について】

また、冬に買った灯油を使い切らないうちに春になってしまうこともあるでしょう。灯油は、時間とともに品質変化が起きる石油製品です。直射日光を避け涼しい場所に密閉保管したとしても、6か月を目途に使い切ることをおすすめします。半年を超えて保管した場合、酸化が進んで燃焼不良などを引き起こすおそれがあるからです。

完全な状態で保管しているつもりでも、ポリタンク上部の空気と反応して劣化する場合があります。微量に含まれている硫黄の影響で黄色く変色・劣化した灯油を「変質灯油」といいます。また、うっかりポリタンクのふたを閉め忘れて水分が混じってしまった灯油を「不純灯油」といいます。こうした変質灯油や不純灯油の使用は、石油ファンヒーターの故障にもつながりかねません。

以上のような理由から、冬のうちに使いきれなかった灯油は、購入した業者に相談したうえで処分することが望ましいのです。

【使用容器について】

容器についても注意が必要です。どんな製品にも寿命があるように、灯油のポリタンクも経年劣化していきますので、製造後5年を目安に交換するといいでしょう。

灯油ポリタンクの製造年月は、製品の表面に刻印されていますので、確認しておくことをおすすめします。

そして購入する際は、日本ポリエチレンブロー製品工業会による推奨認定ラベルが添付されているものを選べば安心です。

出典:日本ポリエチレンブロー製品工業会 パンフレットより

不良灯油の見分けかた

正常灯油

  • 透明である
  • 不純物の混入がない
  • 灯油の臭いがする

変質灯油

  • 昨シーズンより持ち越した灯油
  • 温度の高い場所で保管した灯油
  • 日光のあたる場所で保管した灯油
  • 乳白色のポリタンク(水用)で保管していた灯油
  • 容器のふたが開けてあった灯油

不純灯油

  • 水やごみなどが混入した灯油
  • ガソリン、軽油、シンナー、機械油、天ぷら油などが混入した灯油
  • 灯油以外の油を入れたことのある容器に保管した灯油
  • 水抜剤や助燃剤を添加した灯油

※保管状態によっては、色が着いていなくても変質灯油になっている場合があります。

引用元:一般社団法人 日本ガス石油機器工業会(JGKA)

こんな使われ方をしています

灯油は一般家庭では、暖房機器の燃料として使われることがほとんどです。

石油ファンヒーターや石油ストーブを使うときは、30分~1時間おきぐらいに必ず換気をしてください。換気しないで使用し続けると一酸化炭素中毒を引き起こしますので、非常に危険です。 灯油の燃料外の用途としては、化学処理を施した塗料の薄め液や、ドライクリーニングの溶剤などがあげられます。

石油ファンヒーター

室内空気を使って燃焼し、排気を室内に出す暖房機で、対流ファンが内蔵されています。

石油ストーブ

室内空気を使って燃焼し、排気を室内に出す暖房機で、しんを使って燃焼します。暖房方式は放射式と対流式があり、給油方式ではカートリッジタンク式と、固定タンク式があります。

引用元:一般社団法人 日本ガス石油機器工業会(JGKA)

災害発生時の対応

近年は地震や豪雨などの災害が頻発し、日常あたりまえに使っている電気やガスなどのライフラインが寸断されることも珍しくありません。仮に、寒冷地や冬季に災害が起きてしまった場合、電気やガスによる暖房機は使用不能に陥ってしまいます。 そんなとき重宝するのが石油ストーブです。灯油さえあれば、暖がとれ、持ち運んでどこででも使え、停電時の灯りにもなり、お湯を沸かしたり煮炊きもできる、非常時には心強い暖房機といえるでしょう。