炭には製法により「黒炭」(くろずみ・こくたん)と「白炭」(しろずみ・はくたん)があります。

また、天然木からつくられる一般的な木炭の他、ノコギリ屑を固めて作るオガライトと言われる人工の木を炭化させた「オガ炭」、炭の粉を糊で固めた「炭団」などがあります。 それぞれ詳しい説明は別でしますが、まずは木炭についてご紹介します。

日本人と木炭の出会い

人間が火を使い始めたのは、今からおよそ45万年前の旧石器時代と言われています。

愛媛県肱川町に、今からおよそ30万年前に出来たという「鹿ノ川洞窟」があり、この洞窟から人骨や石器類といっしょに少量の木炭が発見され、これが日本最古の木炭と知られるようになりました。

隆起・発展

その後、弥生時代の後期(3世紀)になって鉄製の農機具が使われるようになり、その金属加工用に炭が使われるようになりました。当時の炭は、最も原始的な製炭法で作られた「ニコ炭」と呼ばれるもので、火つきがよく燃焼温度が高いのが特徴です。

奈良時代に入ると、東大寺の大仏建立など鋳造としての用途の他に、暖房としての炭が重要視されるようになります。すると、従来の「ニコ炭」の火付きの良さよりも、長時間も燃えつづける「火持ちが良さ」が求められるようになり、炭窯で焼く「アラ炭」が生産されるようになりました。

この傾向は平安時代に移るとますます顕著になり、唐から持ち帰られた製法で作られた、更に良質な「イリ炭」が広まりました。現在の備長炭にも通ずるこの製法は、空海が中国から日本に伝えたとする説が有力です。この頃に詠まれた、炭焼きの風景が詠われた短歌が数多く残されています。

鎌倉時代以降、炭の需要はますます増え、炭焼き専門職や農家の副業としての炭焼き業が商売として確立され、同時に炭のみを扱って商いをする炭商も現れました。炭の品質も、室町期の「茶の湯」の隆盛により、需要者の厳しい要求を満たすため、著しく向上していきます。
そしてついに江戸時代、紀州の田辺地方で非常に良質な白炭が開発されました。「備長炭」の誕生です。紀州藩が藩を挙げて製炭業を保護・育成したこともあり、紀州備長炭は現在に至るまで高い品質を誇っています。備長炭に負けない品質の炭を作るべく努力した藩も多くありましたが、機密扱いのその技術を入手することは容易ではありませんでした。例外的に、薩摩藩が使者を紀州藩に送り調査を行った記録が残されています。

その後明治の終わりから大正のころに紀州備長炭の技術が現在の高知県・宮崎県に伝えられ、現在ではその3県が国内の備長炭三大産地となっています。

環境にやさしい木炭

カーボンニュートラル

炭は木を切って燃料になったものですが、燃焼しても温室効果ガスを増やすことはありません。なぜなら炭の中の炭素は樹木が元々空気中にあった二酸化炭素を光合成で吸収した塊だからです。一度吸収した炭素を燃焼により放出しているだけなので大気中に二酸化炭素は増えません。

これをカーボンニュートラルといいます。

最近では農業での土壌改良剤など木炭を燃焼させず二酸化炭素の固定ができる用途にも注目されています。

里山(さとやま) 萌芽(ほうが)更新(こうしん) 択伐(たくばつ)

木炭の原料になる広葉樹は伐採しても切株から萌芽するので植林が不要です。伐採適齢期を迎えると伐採・利用され、炭の原木なら20~30年の周期で循環利用されます。炭や薪は最も身近な再生可能エネルギーです。伐採をせず適齢期を過ぎた大径木は市場価値が落ちるだけでなく萌芽更新が促進されにくいため里山林の利用にも支障をきたします。持続可能な範囲で積極的に利用することが里山林の整備につながり人と自然に優しい環境が育つのです。

ナラの萌芽更新の様子 切株から新芽が生える
森が育てる豊かな水
木をつかうことで森が元気
伐って芽を出すどんぐり
木を炭にして使うことで

安全にお使いいただくために

一酸化炭素中毒

木炭が燃焼すると一酸化炭素が発生します。空気中の一酸化炭素の濃度が上がってくると最悪の場合は死につながることもあります。毎日炭を扱う飲食店でも年に数例の換気不足による一酸化炭素中毒の被害が出ています。安全にお使いいただくため、室内でご利用の際は適度な換気をしてください。

災害発生時の対応(発生時・罹災中)

木炭は消費期限がなく、爆発の危険もないため緊急時の燃料として備蓄されることも多くあります。ライフラインが停止していても利用可能で煮炊きや暖房に活躍します。東日本大震災では林野庁から関連団体の全国燃料協会を通じて呼びかけがあり、当組合員からも支援物資として木炭とコンロが被災地に送られました。

消毒用アルコールは着火剤ではありません

新型ウイルスにより消毒用アルコールが身近なものになっていますが、消毒用アルコールは取扱いを誤ると火災を引き起こす恐れがあるので、十分注意が必要です。

消毒用アルコールの特徴

  • 消毒用アルコールには危険物に該当するものもある
  • 火気に近づけると引火しやすい
  • 発生する可燃性蒸気は、空気より重く、低いところに溜まりやすい

消毒用アルコールの取扱い

  • 火気の近くでは使用しない
  • 詰め替えを行う場所では換気を行う
  • 直射日光が当たる場所や、高温になる場所に保管しない

消毒用アルコール火の近くで使用しないことが重要です。火を強くしようとして着火剤や消毒用アルコールをつぎ足すと大変危険なので絶対にやらないで下さい。

こちらのサイトもご確認ください→ 東京消防庁「消毒用アルコールは正しく取扱いましょう!」

バーベキュー時の注意点

バーベキューは炭火焼を身近に体験しやすい人気のイベントです。楽しくお過ごしいただくためにも燃料の取扱には十分ご注意ください。

着火には市販の着火剤をはじめバーナーを使ったり、上級者になると新聞紙などから火を移して着火など色々な方法があります。
しかしながら中には危険な着火方法もありますのでご注意ください。

  1. カセットコンロでの着火は絶対にしないでください
  2. 液状・ジェル状の着火剤は追加注入しないでください
  3. コンロの中など周囲に燃えやすいものがないところで着火してください

カセットコンロで着火をするとカセットボンベに炭火から放射熱が伝わることでボンベ自体が過熱されて爆発の恐れがあります。
こちらのサイトもご確認ください→ 東京消防庁 「カセットコンロの事故に注意しましょう!」 

液状・ジェル状の着火剤を火の中に注入すると激しく引火して火が上がってしまいます。
皮膚についてしまうと中々落ちず重度の火傷になりやすいです。
消毒用のアルコールは着火剤ではありません。絶対に使用しないでください。

そもそも炭火は炎があがらない炭が良い炭とされています。明るい野外では燃焼していても黒いまま燃焼の様子が分かりにくい場合があります。
火勢を増したい場合には手をかざして燃焼しているか確認して熱くなっていれば着火はしているので送風することで火勢は増します。
判断できない場合、ジェル状の着火剤の追加投入は絶対にやめましょう。

火を拡げている時には空き缶の両端を開けたものなど筒状にした不燃性のものをアミ越しに火の上に乗せていると煙突効果により空気の流入が増えますのでお試しください。

楽しんだ後は施設のルールに従い安全に炭火を消火しましょう。

白炭、黒炭、オガ炭それぞれの解説

白炭

白炭とは、木材を炭化させた木炭のなかから、高温で焼成し、窯の外へ掻き出して素灰を掛けて急冷させ消火して作るものを指します。

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黒炭

黒炭は、木材を土窯を使い炭化させた木炭を指します。主成分はほぼ炭素であり、ごく少量アルカリ塩を含んでいます。

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オガ炭

ガ炭は製材工場などから出る「オガ粉」を添加剤など使わず、加熱圧縮し成型した「オガライト」(成型の薪、人工の原木)を炭化したものになります。

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