黒炭(くろずみ・こくたん)とは

黒炭は主にナラカシクヌギなどがあり、専用の土窯(どがま・つちがま)で比較的低温の400度から700度で炭化し、最終段階で焚き口(たきぐち)煙突(えんとつ)(ふた)をし、空気の流入を止めて時間をかけ鎮火させます。

この窯内(ようない)消火法(しょうかほう)で真っ黒にできあがった炭を黒炭(くろずみ・こくたん)といいます。

黒炭は白炭に比べて柔らかく、白炭よりは比較的容易に着火剤やバーナーで火をつけることができ、燃焼温度や火勢(かせい)自体は強いものです。
とても扱いやすい炭になります。

PHは酸性から中性(アルカリ性の物質を吸着)です。内部表面積(多孔質(たこうしつ))が広いなどの性質があります。黒炭にはこの多孔質(小さな孔)が沢山あり、そこに湿気や臭気を吸着することができます。部屋や収納スペースの脱臭・除湿のほか、床下に敷き詰めて家屋全体の除湿にも用いることもできます。
時間経過とともに除湿脱臭能力を喪失するため、定期的に日干しして乾燥させるか、数年ごとに入れ替えるのが好ましいです。

外観の特徴

  • 皮がついている (*一部の炭)
  • たたくと鈍い音がする
  • 表面が黒く、崩れやすい
  • 断面には放射線状に割れ目が出て美しい

性質の特徴

  • 火着きがよい
  • 燃すと火力が強い(遠火の強火)
  • 火持ちは比較的短い
  • PHは酸性から中性(アルカリ性の物質を吸着)
  • 内部表面積(多孔質)が広い

代表的な黒炭

黒炭は北海道から沖縄まで日本国内で広く焼かれているが、製炭量が多い炭はとして、
ナラ炭・・・
岩手「岩手なら切炭(きりずみ)」(生産量ではトップ)、山形「やまが(たん)」、栃木木炭などが産地である
クヌギ炭・・・
兵庫周辺、栃木、高知、福岡が産地で、茶道のお湯を沸かすときに使われる炭
カシ炭・・・
熊本「(かし)木炭(もくたん)」、高知「土佐(とさ)黒炭(くろずみ)」など。なら炭より硬質な炭が多い
などがある。
どの黒炭も火付きがよく、煙はほとんどでることがなく、におうこともありません。

*海外産の黒炭

黒炭は国内だけなく、海外でも製炭されています。

しかしながら、精錬(せいれん)もあまく、短時間に大量に作られるため、着火はいいのですが、火持ちも悪く、(いぶ)り(煙やにおいを出す)や炎を上げる品質のよくない炭が多いのが現状です。

使用されるシーン

BBQ(バーベキュー)、炉端焼き、火鉢、囲炉裏(いろり)、茶道 など、
燻りや爆ぜることがなく、着火が容易の炭のため、そのような条件が必要な場所には最適です。

炭の発展に大きく寄与した茶道(さどう)(ずみ)

室町時代から、茶をたしなむ風習が大名や貴族、僧侶、武家階級等の間に広まりました。茶道炭(茶の湯炭)は、当時刀剣や甲胃など武具の製造に使うために 盛んに生産されていた黒炭の製炭方法が改良され、茶の湯を沸かす燃料として生まれたものですが、その製炭技術の向上には千利休らの茶人も大きな功績を残したとされています。

茶の湯炭はただの燃料としてではなく、炭の色、つや、肌の感触のほか、香り、 火相(ひあい 火の(おこ)り具合)なども大切な要素となる 一種の芸術品です。

燃やしても煙や(ほのお)を出さず、火力の調整が簡単で、火持ちが良く、軽くて保管や持ち運びが便利で、腐らない燃料「木炭」の出現は当時としては大発明であり、人類最初の「燃料革命」だったのです。

古代から近代に移り変わっても、世界各地で木炭が焼かれ、生活用に、産業用にと燃料の中心として利用されてきました。 現在、世界のトップ水準にあると言われている日本の木炭技術も、もとは中国から学び取ったもので、これに日本の炭焼き師たちが独自の工夫を加え、研究を重ねた結果、今日の優秀な国内木炭が完成されたのです。

炭ができるまで「製造法」

材料となる木は「原木(げんぼく)」・「炭材(たんざい)」などと呼ばれ、広葉樹が好まれますが、炭の質を一定にするため出来る限り1種類の木を使って焼かれます。
中でも楢(なら)・樫(かし)・椚(くぬぎ)など団栗(どんぐり)のできる硬い木が好まれます。

炭材詰め

原木を(かま)の大きさに合わせ立てて密集させて詰めこみます。

乾燥

原木をギッシリ詰め込んだ窯の口から(わら)・雑木(ぞうき・ざつぼく)などで口火(くちび)を焚いて炭材を乾燥させます。

着火

炭化させるために空気を絞りながら徐々に炭材に着火させます。
通常の燃焼とは異なり、酸素の供給を最小限に抑え窯内を高温の状態にしていきます。

精煉(せいれん)

着火が始まり、充分に火が回ったらここから少し空気の通る量を増やし、炭を硬く締めていきます。
目に見えない炭窯の中でのことなので、何が起きているのか製炭士の経験と勘による技術が特にものを言う作業です。
着火が失敗すれば赤茶けた消し炭のようなものが出来てしまいますし、精煉が進み過ぎると炭が焼失してしまいます

消火

納得の行く精煉度を見極めたら窯口や煙突口などを塞ぎ密閉して消火します。

窯出し

数日置いて完全に消火したら窯口を開け出荷することになります。
こうして約2週間の時間を費やして作られた木炭は、職人の経験と技術によって支えられています。