白炭(しろずみ・はくたん)とは?

白炭は主にカシ(樫)、ウバメガシ(姥目樫・馬目(ばめ)樫とも)、ナラなど堅い広葉樹を専用の(かま)で炭化し、最終工程で空気を送り込み1000度を超えて堅く締まった炭を少しずつ掻き出して窯の外で急速冷却させます。

白炭の製造工程

伐採→窯に入材→乾燥→炭化→精錬(せいれん)窯外(ようがい)消火(しょうか)

和歌山県のウバメガシ林 群生するのが特徴

窯に入れた木(原木や炭材と呼ばれます)を蒸し焼きにするのは一般的な木炭と同じですが、白炭は炭化の最終工程で「ねらし」「あらし」と呼ばれる工程があり、「ねらし」が済んだ炭から少しずつ掻き出してきて灰や砂に水を混ぜた「消し粉」をかぶせて消化します。窯の外で急速に消火するのが特徴で、消し粉が炭の表面に残り白くなるので「白炭」と呼ばれます。
実際には入材の前に木を調える作業や、煙の色やにおいで窯を微調整する作業があり経験と勘による技術が必要な作業です。

ねらし中の備長炭窯内の様子
備長炭(樫白炭)の窯出しの様子 消し粉が用意してある

白炭は堅く締まり比重が大きくなるため重くなります。
火の回りが遅く、着火に時間がかかりますが安定した火力を長時間維持します。

外観の特徴

  • 樹皮が剥がれている
  • たたくと金属音がする
  • 表面が白っぽく堅い
  • 断面には金属のような光沢があり美しい

性質の特徴

  • 火着きに時間がかかる
  • 燃すと火力が強い(強火の近火)
  • 火持ちは長い
  • PHは酸性から中性(アルカリ性の物質を吸着)
  • 内部表面積(多孔質)が広い

代表的な白炭

備長炭は代表的な白炭です。本来は原木をカシ・ウバメガシとする白炭で高品質なものが備長炭です。カシ・ウバメガシは日本の温暖な地域の気候に分布していますので、必然的に気候帯の異なるカシ・ウバメガシのない地域の外国産は本来の備長炭ではありません。

和歌山の紀州備長炭・高知の土佐備長炭・宮崎の日向備長炭と、この3県が備長炭の三大産地と呼ばれますが、ナラを原木とする白炭は日本各地で作られています。

安全にお使いいただくために

爆跳

白炭は堅く詰まっているように見えますが、実際には非常に大きな表面積があります。この中に臭気や水分を吸収するので1000℃を超える窯から生産された備長炭でも水分を含みます。

加熱時この水分が上手く抜けないと大きな音とともに膨張した内部の水蒸気が炭を数メートルも弾くことがあり「爆跳」と呼ばれます。炭自体も原木・季節や環境など様々な要因で爆跳の原因になることがあり、昔から色々な対策も考えられていますが爆跳を完全に防ぐことはできません。

火がまわって赤くなった白炭はもう弾けることはありませんが、加熱時にはのぞき込んだりするのは危険です。熱い炭が飛び散っても大丈夫なように周囲に燃えやすいもの、熱で溶けるものなどないようにしてください。実際に飲食店で弾けた炭がテーブルや衣服を焦がしてしまう事例があります。
また、臭いを吸ってしまった炭は加熱時に臭いを吐出することがあります。

保管には爆跳の原因となる水分と臭いの少ない場所で保管してください。

主な爆跳対策

  • 急な加熱にならないように火力を調整する
  • 着火の前に予熱により水分を抜く
  • 逆に水に浸けておくことで急過熱を防ぐ

消火する際には火消壺をご利用ください。空気を遮断して消火すれば残った消し炭を再利用することができます。
炭は水をかけたくらいではなかなか消えません。コンロも傷みますので水をかけての消火はしないでください。たまった水に熱い炭を入れると瞬時に沸騰した熱水が飛び散り危険です。

白炭はこんな使われ方をしています

焼鳥 ウナギ 焼肉 インド料理 せんべい

炭の中でも特に燃焼時間の長い白炭は昔から業務用に多く使われてきました。昔から江戸のウナギをはじめとする飲食店では特に高品質な紀州備長炭が喜ばれ江戸に向けて出荷されました。今ではやきとりや焼肉・インド料理でも、燃焼時間が長くタレや脂が落ちても火力が復活する白炭が好んで利用されます。